アフリカとの出会い・特別寄稿 “YES,WE CAN”という画期的な出来事

           アフリカンコネクション
             ガスパレイ・ミグィ・キルス


 人類は衝撃的なニュースを受け取った。

 賞賛、喜び、歓声、幸福、涙をもって第44代アメリカ大統領としてバラク・オバマを迎える。彼は地球上、最も影響力のある人間になろうとしている。4年に一度の大統領選挙がどうしてこんなにも興奮と驚きをもたらすのか?この男は何者だろうか?どうしてこんなにも世界は興奮しているのだろうか?

 まず彼は、今まで当選してきたどの大統領とも違っている。スワヒリ語の彼の「barak」という名前が示すように、彼は「祝福された」人なのである。ケニア人の父親とアメリカ人の母親から生まれたその息子は世界の価値観を変えたのだ。ミドルネームにイスラム教のフセインという名を持つその黒人男性がついにアメリカの大統領になるのだ。

 すばらしく知的で、情報にたけ、抜群の発言力を持つ彼。彼は、すべての世代の老若男女の心を動かした。彼の功績はいつまでも人々の記憶に残る歴史的なものだ。

 たった一世紀半前までのアメリカでは、オバマのような黒人たちは奴隷であったことを忘れるべきではない。奴隷制度は人類歴史上最も恥ずべきものある。人間が、物のように所有され、扱われ、取引され、動物よりも劣悪に扱われた歴史。例えば、あなたが市場で、子どもや家族や全ての知人たちから引き離して一人の人間を買ったとする。あなたはその人間に対して生かすも殺すも思いのままの権利を持つことができたのだ。

 たった40年前、黒人はアメリカをはじめ、どこにいっても市民権はなかった。それは選挙権がない、人種を超えた結婚ができない、よい学校に通うこともよい病院に入ることもできず、よい仕事にも就けず、そして法的な権利を持たないということである。

 オバマの選挙結果がこれまでの選挙と如何に違っていることか。彼が勝利宣言の演説をしたとき、黒人の歴史を思い、選挙がもたらした歴史的意義に人々は喜びの涙を流した。しかも、オバマの勝利はアメリカに住む黒人たちだけのものではない。我々すべてにとって勝利なのだ。

 将来首相になりたいと願う日本の子供の勝利である。政治家出身でも、資産家出身でなくとも、志を持ち、一生懸命に学び働き、夢の実現に向けて努力すれば可能なのだ。 能力もあって弁護士や医者になりたいと願う子供を持つシングルマザーの勝利である。彼女たちは一生懸命に働き、子供たちに夢見ていることは叶うと励ますだろう。

 両親から見放された孤児院の孤児たちの勝利である。望むなら大統領になれるかもしれないのだ。自殺寸前の絶望的状況にある人の勝利である。すばらしい明日があるのだから捨て身になって明るく前向きに希望を持って困難を乗り越えよう。不利を有利へと変えていくのだ。希望を失い、自分さえも信じられないという会社員の勝利である。自身の能力を未来の人生設計のために100%生かすのだ。

 オバマの勝利は、挑戦する私たちすべての勝利だ。よりよい未来を夢見る私たち。子どもたち、友達そして家族について思い悩む我々。我々は、たゆまず働き、自分の能力や才能を信じ、夢を持って前進すれば全ての困難を乗り越え、なそうと思ったことをやり遂げることができるのだ。

 オバマ次期大統領が、我々誰もが考えるよりももっとずうっと厳しい状況を乗り越えることができたのだから私たちにも出来るはずである。

 私個人にとっても、彼の勝利は特別であった。同じ祖先を持つケニア人として、この選挙を見届けられたのはなんと幸運だろう。どんな教師が教えるより、どんな牧師が説教するより、世界中の不利な立場に置かれている人々を励ますだろう。

 それ以上に、成功できないのを能力の所為にするかもしれない二重国籍の我が子供たちを励ますだろう。能力は肌の色で決まるのではなくどんな人間なのかで決められるのだ。私は、オバマが彼の挑戦的な生い立ちを乗り越えたのだから、子供たちも才能を開発し成功できないはずはないと繰り返し言うだろう。

 私たちが挑戦しさえすれば、基本的に夢は叶うのだ。私たちはよりよい世界に変えることが出来る。私たちは政府に対して影響を与えることが出来る。私たちは社会的弱者で、支援を必要としている人たちを支え得るのだ。私たちは自分の能力に応じて、地域を向上させてゆく努力や活動によって、経済的支援だけでなく道徳的にも応援することが出来る。一人の生活を変えるだけではなく世界に多くの変化をもたらせることに私たちは誇りも持とう。それは、私たちの義務なのだ。

 個人的に、私は今までにないくらいこの選挙に励まされている。私は、ケニアを含むアフリカを助けるための更なる努力を惜しまない。


 子どもたちが飢えて死んだり、女性たちが予防可能な病気で死んだり、男たちが自分自身理解もしていないのに、資源を争う戦争で死んだりする理由はないのだ。

 世界には人類の生活を向上させる能力も、豊かな資源もあるのだ。私は、すべての人に変化と希望をもたらしたい。そう、我々はできるのだ。

 私は、ケニアが必要とする変化をもたらす活動に従事し、誠実な指導
力を持って社会に奉仕する者になることを約束しこれを寄稿する。
                                          (訳文:竹田悦子)